00. 名前はメアリーで、サイト名は、さがしもの、です。 物語性が短い文章で出せるように頑張ります。 01 一言も音は発しなかった。でも、何よりも雄弁だった。 問いかけられた一言に、握り返す手だけが欲しかった答えだった。 (告白) 02 守るためと言えば聞こえがいいだろうが、結局は本能的に彼女は偽った。 頭の片隅をよぎったのは、部屋の入り口で空っぽを見渡す自分だったから。 (嘘) 03 時の流れを確認する。 成長して去って行くんだというイメージを貼り付ける。 その成長という言葉が終わりを出発にして、祝福を引っ張り出す。 (卒業) 04 動き続ける景色と細く入って来る風。遠ざかる日々の仕事。 少しずつの変化を逃さず見つめる。 終着までに、記憶に擦れるような邂逅を期待して。 (旅) 05 選ばせてやる。どの罪を選ぶ? 聞かれて自分とそして相手が経験した何年かを思った。 知識は増やせても、罪に関しては何も学び得ることはできない。 (学ぶ) 06 窓から溢れる緩やかな日の光。 外が暗い内は本を読んでいた。 その目をあげてみたくなる。 うとろむ速さで過ぎてゆく平野、広い川原、そして電線。 (電車) 07 あなたの行く先、パブロフの実験の犬みたいについつい追いかけたくなる。 考えてみれば馬鹿みたいだけど、可愛いと言ってくれれば、いいの。 (ペット) 08 目についた。話していることが聞こえて来なくなった。 あの指は手は何を奏でているのだろう。 蠢く指の下、透明な楽器でも見えるようだった。 (癖) 09 いつも誰かを困らせる質問だ。 国によって違う、意識によって違う、容姿によって違う。 人も行動も形容する。 「大人と子どもは何が違うの?」 (大人) 10 あなたはこれを必要な事から楽しい時間に変えた。 あなたの魔法だと思った。 温かい魔法を いつか必要な時にあなたに使うのが 小さな夢になった。 (食事) 11 世界には理不尽がある。つかめない話も多くある。 文字にされた分だけ、飲み込みやすくなった世界。 その代わり、本を読むのは自分一人だけ。 (本) 12 どんなに素敵でも怖くても、途中で途切れてしまうの。 だいたいは朧気にしか覚えてないから、続きを、時には全体を、 自分で編んでみるの。 (夢) 13 そこに流れたのはただの空気のはずだった。 ため息と誰かが名付けるだけで。 その間、 沢山の言葉が棄てられ、 沢山の気持ちが諦められるだけで。 (女と女) 14 他愛無い日常と相反する滲みが見えた。 燃やした時、かすかにラベンダーが香った。 あまり開くこともなかったけれど、会う前だけは違った。 (手紙) 15 あなたは全てだった。幸も不幸もあなたに依った。 良心が咎めれば、あなたに許しを乞うた。 無力な時はあなたに祈った。 昔から続く営みのように。 (信仰) 16 にやりと笑った。守りに隙を見つけたから。 次の番では驚かせてやろう。 何枚ひっくり返るかな。 時間はあるし、もう一回付き合ってくれるでしょ? (遊び) 17 どんなことでも、まず最初に驚いてしまうので 素敵だとか泣けるとか 動きのある反応を置き忘れてしまって もったいないと思うけど いつもいつも取り返せない (初体験) 18 没頭すれば、面倒は去り、楽に過ごせると思った。 でも、降り積る澱、踏みつけた悲しさを踏みつけ、 彼が置き去りにしたものが幸せへの道標だった。 (仕事) 19 自分を作った。目的に合わせて表情が活きる色を乗せて。 整えた地を確認し、映る自分に暗示をかけた。 今日も人混みに生きていくため。 (化粧) 20 目が大きく見開かれた。肩がぶるりと震えた。 口が音のない声を吐き出し、手は上がりそうな気配を見せた。 どこか冷静にごめんなさいと思った。 (怒り) 21 途方のない高さで切り立った崖。 誰かの意志の下、造形されたかのような 静かな岩場。澄んだ水。 そっと八百万のものたちが降り立ちそうな。 (神秘) 22 驚くような早さだった。嘘であり、真実だった。 当事者である彼は、その速さと実体の無さに 置いていかれた。 彼が追いつけば、それは消えた。 (噂) 23 永く永く続いてほしくなるような、傍にいる幸せを女は感じていた。 環境が 自分達が変わっても 繋いだ糸のような瞬間からだけは手、離さない。 (彼と彼女) 24 傷みだった。 何もできない染みるもので、時間しか、それを癒せなかった。 処置しようとすれば見えなくなり、 忘れようとすれば疼きだした。 (悲しみ) 25 生きるために食べている 生きるために叫んでいる 生きるために塞いでいる 生きるために触れている 生きるために吸っている 生きるために泣いた (生) 26 文句を言うことができなくなった。 返ってくるのは何もない沈黙ばかりだったので。 最後の機会に会いに行かなかったのは、 薄情なことだろうか。 (死) 27 現実から観客を引き離す力。 過去に一度は求める現実は実態がつかめないものだった。 相手が望む自分を演じるときだけ、真実は違うとわかる、 (芝居) 28 この想いを遂げるのにこの体なんかいらない、 意思さえあれば望みが叶えば 自分がその刹那どんな姿であっても構わない、 という勝手を貴方は叫んだ (体) 29 たとえようもない笑顔に貫かれて 浮かんだのは、これ以上ないくらい本当の気持ちで 伝えきれなくて切なくなりながら、ありがとうと囁いた。 (感謝) 30 平坦な道を辿って来たので、冒険がしてみたかった。 今までにないイベントを自分の人生に落としてみたかった。 知らない気持ちで文字通り飛び立つ。 (イベント) 31 あなたを撫でられない指先が泣いた。 冷えた爪がカツカツ音をたてた。 目に涙は浮かばなかった。 でも、頭の中で揺らぐ笑みが暖かかった。 (やわらかさ) 32 忘れようと思った。 辛くても、しゃがみこんで何もしないわけにはいかないし、 誰かに伝えたいものでもない。でも汚い瘡蓋、少しさびしい。 (痛み) 33 もしも、手渡すように 愛ではない好意を伝えることができるなら、 ただただ、好きという気持ちを 今までごまかした分だけ素直に降らせたい。 (好き) 34 もはや時効でございましょうね、ぽつりと女は言った。思わぬ告白に息を止めた。 彼女とは最近遇った。関わりのなかった人だと、疑わなかった。 (今昔(いまむかし)) 35 鍋料理の湯気 怒涛の雪解け水 西瓜の甘さ 紅葉を濡らす長雨 知りうる優しさ 水が満ちていくような 潤いがそこにあれば そうだよ、 生きていけるんだよ (渇き) 36 例えば、季節に合った花々が美しく咲き誇る庭に射す日の光。 急き立てるもののない安寧。 時間を忘れて見上げた星空と、静かな穏やかな会話。 (浪漫) 37 花が咲くのが楽しみだ。 時は花や大地の色のうつろいと旅をしている。 星月とともに待っている。 変わり行くゆえの楽しみは時に心を和ませる。 (季節) 38 どうということはなかった。 その時に泣ける程に私はよく分かってはいなかったので。 これから来る寂しさがどんな痛みや或いは光を与えるのか。 (別れ) 39 貴方に今日こそは愛の歌を歌いたい。 貴方を捕らえて離さないような、 いいえ、ただ貴方に力を与うような、 あたしにも、誇りをくれるような 愛の歌。 (欲) 40 綺麗な本を服をゲームを人形をイヤリングを みんなもらってきた。 どれもこれも楽しかった。 その向こうに選んでいる姿を見たと思ったから。 (贈り物) |