#71 言葉は、オブラートで包むのではなく、砂糖をまぶすくらいがいい #72 忙しかったり、 生き方に迷ったり、 と、 自分しか見えない日々の、時間の隙間で ふと貴方のいる安らぎを思い出す。 ごうごうと、吹き抜けていく生活の中で それは触れたくなる柔らかさだった。 眠りながらまさぐる毛布のようで 覚めると、 確かにそこにいたのに、と ぼんやり暖かい夢のように感じる。 #73 あなたのしなやかさは憧れだった。 あなたが私の歴史に登場する前は、私は一人のやるせなさを知らなかった。 一人に慣れっこだった私には、その自由も静けさも馴染みの感覚だったけど 迷子のようなさ迷い子のような淋しさは未知だった。 #74 冬の鼻先凍るような寒さの朝、彼女はいつものように冷たい水で野菜を洗い、 半纏を着て、ひいやり冷たい床で座り仕事にも、打ち込んでいた。 馴染みのない生活を送ってきた、不器用で、年若い女児に 語り下手でも、その行動は白い冷気の中の忘れない暖だった。 #75 寂しいを数えて なだらかにうねる地平線を目でなぞりながら その光景の寒さに あなた一人の立ち姿を浮かべる 視線を絡めながら 西日を浴び 歩いていけることを夢のようだと思う 現実には その瞳を見つめられるほど 興味は持ってもらえない しかたなしに 景色に邪魔なあの雲のような 寂しさだけ数えて あなたを忘れる #76 子どもの頃、恋愛小説が嫌いだった。 それは誰にでも起こりうるが、分かち合いにくいドラマだ。 赤毛のアンや他の多くの少女ヒロイン達が、 憧れるのでなく、恋をした瞬間、彼女達は共に見る夢から遠ざかった。 それを受け入れられるようになったのを知った時、 遠ざかっていったヒロイン達を、小説の終わりまで見送った時より、 寂しくなった。 #77 私が必死で繋ぐ糸を子供の姿のあなたが真剣に切っていく、そんな幻を涙の曇りごしに見た #78 咲きすぎの白いツツジ 闇に照らされて 妖しくて胸が苦しかった #79 運命が囁く 肩に手をかけ、そっと あの子とこの子の縁 運命が謡う 耳にすると、浮かれちゃうリズムで 素敵なあの子のパズルピース 運命は語らなかった とても知りたかったのに全然 いかすあの子との未来 その気配を感じては大笑い 感情はいつもふたつ #80 あなたと優しい歌が歌いたい 手のぬくもりをかんじながら あなたを責める言葉ばかりが溜まっていく 目の奥に熱を感じながら 光はあなたのそばに漂っていた あなたごと抱きしめて離すまい 幸せは自分の後ろにこそあると 知っていながら |