#21

つまらないことなんだ
あたしが貴方に言えないのは

本当に
貴方が聞いても
その日寝たら次の朝には忘れてしまうような

あたしにとってだって
大したことなんかじゃない
…つまらないこと

でも
この口はそれを紡げない





#22

あの窓を通した

小さな世界のほうが

今よりずっと広くて

僕をみせたのに





#23

あのこが喜んでくれるだろうといったって、
本当は、違うかもしれないんだ。
あのこの反応が、だいたいこちらの予想通りだったからって
今回は、その次はいつかは違ったかもしれない。
だって、あのこの思い出を記憶を生涯を、
すべて見せてもらって、総て知っていたわけではないのだから。





#24

うん、神さま、たぶんあなたを愛してる




#25

さ迷う私は


ずっと
ずっと
みつけたかった


信じられる夢
大事な人が幸せになる方法
恨みを忘れること
嘘を最低限にして生きていく道
私のものになる力
やりたいことに心おきなくのめり込む残酷さ


欲張りな私は


もっと
もっと
ほしかった

ずっと
ずっと
さがしている





#26

時間ほどには、気まぐれじゃないよ





#27

いつも
血を流しながら歌っていたあなたが、
傷つかない歌を奏でられるようになってよかった。

むかしのあなたの歌を聴くと
泣かないあなたの繊細な声で
固まらない瘡蓋を掻き毟られるような気がしたの。
この人は傷ついているという安心と、
この人は苦しんでいるという悲しさで、
一緒に狂ってしまいたい気がしたの。

いまのあなたの歌を聴くと
傷つけないあなたの優しい声音で
そっと包まれている気がするの。
この人は心から愛しているんだという羨望と
この人は痛みを知っていたんだという追憶で
幸せに酔って大声で泣き出したい気がするの。

いつも
心臓を掴まれるように聴いている私が
歌をくれるあなたにひっそりと思いを記してみた。





#28

乗っていた橇は思いきり
こっちの意志とは関係なく飛び出した

笑えるほど見事に放られた

橇が落ちる音を聞いた

起き上がる気は湧かなくて
そのままねてみた

地についた耳は
周りが追い越す風を拾った





#29

もし形を変えて生まれ直すならば、

大好きな人のナイトになるんだ。





#30

言葉の力を知る貴方にこそ伝えたい

それは全てを現せる魔法じゃない