#11

行こう 悔やまない僕へ

音を鳴らせ叫べ叫べ叫べ叫べ

さびしいくらいに自由なんだ

欲しかった欲しかった自由は

今手の中にあるんだ

子守唄に眠ったりしないで

歓喜の歌に踊れ踊れ踊れ踊れ



ほら 大切な声が呼んでいる

起きて起きて起きて起きて

さあ 行こう





#12

あたしは幸せの微かな匂いにさえがっつきながら、
その甘さに思わず口を閉じる、馬鹿な馬鹿な人間で、
憧れの中涙を流し、
現実にあてられて怯む、情けない自分を知っていた。
だから、
後で自分が放り出したくなるようなものに、いつも手を伸ばしてしまう。





#13

もしかして自分以上に守りたい誰かに遇えるかもしれないじゃないかとそいつは、
ふざけた態度でうそぶいた。





#14

もし、

周囲に隣人のない処に、

ひとり暮すような、

そんな事があれば、

絶対にそこに、


ピアノを置きたい





#15

身近な願いは、
人に言うと叶う気がして。


遠大な夢は、
人に言うと叶わない気がして。





#16

地図を指でなぞると、いろんな所へ行ける気がした。

それだけで、夢見ることができた。

世界を見渡せるような、大きな気もちがした。





#17

世界に苔のように生す悲しみを

無視して笑う 晴れ
まゆを顰める 曇り
溢れて泣く  雨





#18

鮮やかに覚えているのは、とても苦しい
でもまっさらに忘れてしまったら、きっと悲しい
寂しいよりずっと、耐えられないだろう





#19

あたしは躓いたんじゃなく立ちどまったのだ。
あまりにも細く
数える気にもならない程多い
可能性を前にして
どれか一つ選んだら
周りの幾つかが見えなくなる
そんな道で。





#20

艶やかな姿、繊細さを纏った微笑み、と宮殿の女主人は際立っていた。
―あら本当にひとのふりをするのが上手だこと。